茜色に染まる夕暮れの海にトカラ列島の島々が浮かぶ風景は、
屋久島でも年に数回しか拝めません。年寄りたちによれば、
いつもは見えない遠くの島がふっと透けて見えるのは雨の前触れとのこと。
しかし、これに雲の切れ間から金色の光条でも差し込んでごらんなさい。
まさに垂涎ものですよ、油井さん。
おまけに、その夕景色を海辺の温泉に浸かりながら眺めるのですから……
もう20年近くこの島に居着いてしまった理由(わけ)がわかるでしょう。
島々に新南風(あらばえ)が吹きはじめました。
かつて琉球弧の人びとは、この風に乗って北への船旅に発ったのです。
《#02》 29.Apl.2000 / Jun Hoshikawa