Jack T.Moyer
ジャック・モイヤー 1929年3月7日、アメリカ合衆国 カンザス・トペカに生まれ。
1952年、生物学と東洋学を学んだニューヨーク・コルゲート大学を卒業、その後朝鮮戦争の期間をアメリカ空軍の一員として過ごした後、ミシガン大学において魚類学の修士号を取得。さらに1984年、東京大学において珊瑚礁に棲む魚の繁殖生態に関する研究により博士号を取得。
 1952年、当時アメリカ空軍による爆撃訓練の演習地とされていた三宅島南西沖の岩地・大野原島(通称三本岳)を繁殖地とする世界でも貴重な海鳥・カンムリウミスズメを救うため、当時の米トルーマン大統領の側近に爆撃中止を訴えた手紙を送る。その結果、爆撃訓練は中止され、このことをきっかけに三宅島の人々との長年に渡る交流が始まる。後に島の名誉市民となる。
 日本の野生生物の保護に関する貢献は広く、これまでに環境庁、日本野鳥の会、また世界自然保護基金日本支部からの表彰を受ける。1996年には朝日新聞より、海における環境教育活動への貢献に対して初のAnnual Ocean Awardが授与される。
1998年2月、海洋生態学のフィールドにおける長年に渡る貢献に対し、株式会社SMHジャパンにより、オメガ創立150周年記念の表彰を受ける。また執筆活動も広く学術的なものから一般向け雑誌に至るまで、これまでに300以上に渡る論文を発表している。
【油井】三宅島に住まわれてからもう50年になりますか?
【モイヤー】いやまだあと2年・・・で半世紀になります。ですからあと52年ぐらいやりたいですね(笑)
【油井】っていう事はアメリカに住まわれたよりずっと三宅島の方が長い。
【モイヤー】ですから故郷という気持ち・・・私は三宅島の人です。
【油井】そうですよね。その三宅島がもうエラい事になっちゃいましたね。
【モイヤー】そうですね今年の6月頃、私たちみんな厄年、いい年になるなぁと思って、例えば私のサマースクールという、小学生から高校生の海の自然の学校、今年もすごく(予約が)いっぱいだった。
【油井】毎年夏に先生は三宅島でサマースクールをやってるんですよね。自然を前にして子供達に自然や魚や海の事をわかって貰おうと・・・
【モイヤー】そうそう、それが7月の初め頃から噴火して全部なくなってしまった。私だけではなくて民宿とダイビング関係と大勢・・・三宅島の経済関係の事は大体夏休みです。噴火は丁度夏休みの前ですから。しかし今も、私たちがこう話している間も噴火しているという。

【油井】実はそのモイヤー先生は歌も大変お上手で、前に僕が三宅島にいった時に、歌ってくだすったんですがオレ感動して、で、そのCDをプロデュースさせて頂いて・・・そのCDを作る前に、まだ噴火する前の三宅島の音を録りに行ったんですよ。その音をちょっと、CDの最初の曲になりますが、聴いてみましょう。

CDのページはこちら(試聴できます)
[地球の子供たちへ / パパ・ジャック・モイヤー]

【油井】鳴いている小鳥はなんですか?
【モイヤー】イソヒヨドリ
【油井】いま三宅島はそのイソヒヨドリたちも大変でしょうね。
【モイヤー】そうですけど、やっぱり三宅の自然全部大変ですね。イソヒヨドリは海岸にいる種類ですが、森の中の種類も・・・
【油井】あのアカコッコ(天然記念物)たちは?
【モイヤー】アカコッコはツグミの仲間です。ツグミは大体縄張り意識が強いですが、アカコッコはそうでもないです。(なにかあった時には)  自分の縄張りから出ます。
今の問題はガスです、凄い危ないガスが毎日噴火してる。でも多分アカコッコは神津島、大島、八丈島まで渡ってるでしょう。問題はガスの調査が出来ないという事です。
【油井】島に入れない?
【モイヤー】そうです、だからアカコッコ館(三宅島の自然ふれあいセンター)のレンジャー山本さんという人が神津島で調査しています。神津のアカコッコが増えているかどうかを。
【油井】ああなるほどね。
【モイヤー】私は明後日伊豆半島に行きます。そこでも見れるかどうか。
【油井】そうかぁ、三宅島はもう危なくていけないからね、それしかない。
【モイヤー】私たち1月頃、マスクを持って調査したいと思ってます。マスクが必要です、今ほんとに危ないです。
【油井】噴火は何十年ぶりでしたっけ?
【モイヤー】この前の噴火は1984年、昭和58年。それからその前は37年。
【油井】ですから20年周期ぐらいで、去年伺った時はそろそろかなというお話をされていましたよね。
【モイヤー】2005年とか7年ぐらいが危ないなと思ってましたが、今年急に噴火してびっくりしました。
今年の噴火は今までと全然違う。私も3回噴火見ました、ですけど今回の噴火は3000年ぶりの噴火。
【油井】いやー大変ですね。
【モイヤー】今の火山灰は非常に細かい・・・ホコリみたいに重くて・・・だから年寄りのお婆さん帰ったら自分の畑を掃除しなければならない・・・そんなに重い火山灰をとることが出来ない。ですからこの噴火の後に若い人のボランティアが本当に欲しいです。
【油井】ジャックと話していて素敵なのは、大変なんだけど自然の事なんだから、みんなただがっかりしてるだけじゃなくて次になにが出来るか、なにをすべきかっていう事をいつも前向きに考えておられてますね。
[Blues at Miyake / Jack T. Moyer]
【油井】この曲はジャック・モイヤーさんの作詞・作曲で、詞の方は三宅島に対する愛情とオクサマに対する愛情を重ねた歌ですね。

【長井】CD自体、最初のメッセージで仰っていたとおり、自然と大好きな音楽がひとつの作品になっていますね。愛するファミリーに対する歌もあって、ジャックさんが愛するものすべてがこれ一枚に集約されているというのが伝わって来ます。
【モイヤー】それから三宅の人間も大好きです(笑)三宅の人はでも多分演歌が大好き・・・(笑)
【油井】三宅島にいる魚たちはどうしてるんでしょう、珊瑚礁までありましたよね。
【モイヤー】海の生物は噴火の始めが大変だったでしょうね。火山灰でとこぶし・・・アワビの小さいやつみたいな、と天草とカニとイセエビも大変だったです。でも火山灰が出てないので、秋の潮の流れや低気圧で火山灰はどんどんなくなっていると思いますね。珊瑚も大変だった。しかし新しいポイントから新しいサンゴ、とこぶしもどんどん入ってきますから、多分噴火が終われば2〜3年ぐらいの間によくなるでしょう。今、漁師によるとカツオも多かった。それからシマアジ、メジナ、カンパチ、その魚も・・・いま磯釣りのお客さんないからどんどん増えているでしょう(笑)
【油井】ああそれじゃ海についてはイルカも心配ない。
【モイヤー】隣の島に・・・
【油井】御蔵島ですか。
【モイヤー】そうです、全然問題ない。NHKとTBSの番組でイルカを撮りに行きました、イルカ喜んでましたよ、お客さん少ないから「あ〜やっと人間来ました!」って(笑)
私は年寄りなので15分ぐらい潜ると凄く疲れる。だから船の中入って休むとイルカは待ってる、まだ遊びたいって。
【長井】へぇ
【油井】あのね、モイヤー先生と行くと一緒にイルカと泳いでくれるんですよね。
【長井】いつもイルカは先生を待ってるんですか?
【モイヤー】いや普通の夏は人が多すぎる・・・新宿のラッシュアワーと同じように(笑)勿論イルカは人間と遊ぶのは好きですけど自分の生活もしなければならない、餌とることと、赤ちゃんのめんどうみることと、それと繁殖とか全部大切な事です。だから朝から晩まで人間と遊ぶこと出来ないでしょ(笑)
この噴火である人はイルカが可哀想だといってますが、私が見た限りではそうじゃない。
【油井】人間と遊びたい気持ちはあるんだね。
【モイヤー】そうね人間ウォッチングしてるから(爆笑)
【油井】動物もそうですけど人も大変ですよね。
【モイヤー】一番大変は何だろうというの難しい、いろいろあるから。私の年の人(72才)で畑を耕して生活している人が凄く大変ですね。東京で商売がない、お金もない。それにいつ帰れるかわからないでしょう。
【油井】全然わからないんですよね。
【モイヤー】そうだから、いつまで我慢出来るか・・・貯金を全部使ってしまって、新しい仕事ないから。
それから子供たちね。子供たちは奥多摩の秋川高校・・・1、2、3年生、小学校ね。お母さんは私の住んでる赤羽の都営住宅、そんな人沢山いますね。夜ホームシックで眠れなくて泣いてる子が沢山いるよ。
【油井】ああ、まだちっちゃいんだもんね。
【モイヤー】そうお母さんも一緒にいたい。
【油井】そりゃそうですよね。
【モイヤー】大きい問題はそこまで迎えに行って、週末日曜日の晩まで一緒にいてでしょ。お母さんが二人の子供をそうやって迎えに行くだけで一と月3万円もかかります。自分のお金はその交通費だけで失くなります。
国か東京都かJRか誰か、家族だけのフリーパス
【油井】そうだねパスぐらいなんとかね。
【モイヤー】大したことないと思うんですけど・・・ほんとにこれは自分のチョイスじゃないですね。
【長井】そうですね自然災害ですからね。
【油井】そして「今」お金がないという話ですからね。
【モイヤー】そうです、それでいつまで頑張ればというのがわからない。
【油井】帰るかも、いるかもしれないじゃ仕事だってちゃんとした仕事にはつけないですもんね。
【油井】ところで三宅島救済の基金を設立されてるんですよね。ご紹介しときましょう。
ジャック・モイヤー「三宅島救済アカコッコ基金」というのがあります。
【モイヤー】ちょっと説明させてください。
大勢の観光客が三宅島に来てくれます。自然が破壊されれば三宅島のエコツーリズム、自然関係の観光も非常に難しくなります。どのくらいのダメージになっているかいろいろ調査が必要なんです。それから三宅島の子供達・・・彼らは生まれてから当たり前にアカコッコ(天然記念物)を見てるけど、これ当たり前じゃないですね、大切。三宅島の自然の大切さとValue(価値)をね、子供達に教えるという教育も凄く大切な事なんです。
もうひとつは、私たちが帰ったあとにダメージを治したい。例えば火山灰をとって、三宅島にもともとある植物や木の種や苗を植えたい。早く自然を戻すような活動。
あとは自然観光を紹介する事。大勢のお客さん、観光客は三宅島だけじゃなくて伊豆半島「伊豆」と聞いただけで旅行やめます。伊豆半島や八丈へ行かなかった。
【油井】ああ関係ないのに。
【モイヤー】もう一回お客さんに来てください!っていう事もしたいですね。
ですからメインは調査と教育です。

【油井】なるほどね。もっともっとお話伺いたいですが・・・今日はこのへんで、どうもありがとうございました。
【長井】頑張ってください!
スタッフ一同もモイヤー先生の大ファンで、
よいおつき合いをさせていただいています。
一刻も早い三宅島への帰島をお祈りするのみです。
ジャック・モイヤーさん+油井昌由樹+長井律子