サンフランシスコの街角で手に取った『ホール・アース・カタログ』の表紙は、アポロ11号が月から持ち帰ったばかりの「青い惑星」、漆黒の闇に浮かぶ地球の写真だった。それこそが、地球に対する全く新しいヴィジョンだった。その時にはそれと気づかぬまま「青い惑星」を抱きかかえ日本へ帰り、その後の人生が始まった。23歳の夏のことだった。

今年、1999年の夏、透き通った南の海に浮かぶ小さな島へ行った。その島の手つかずの、触れてはいけないほどに美しい森の中、清水をたたえた池の畔で友と語らううち、オレの心に30年前の、あの「青い惑星」が去来した。何か途方もない大きな存在と、目の前の手の届く等身大の存在との整合を突然感じたのだ。
漆黒の闇に浮かぶ青い惑星の儚くも愛おしい感覚と、美しすぎて壊れてしまいそうな原始の自然の感覚とが、ファインダーのピントが合うようにピタリと重なった。

「blue planet」は濁りのない紺碧の海に浮かぶ「小さな島」。
母なる大海原に囲まれた小さな小さな島。幸いなことに、この島には小高い山と深い森がある。森には清水が湧き出る泉があちこちにあり、そこから始まる川と、小さな滝と、底が見えるほど透き通った水をたたえた大きな池がある。もちろん池には魚たちが住んでいて、そこには虫や鳥や島中の動物たちがやってくる。池から流れ出る川があり、川は島を潤しながらゆっくりと下り、珊瑚礁の海へと注いでいる。

そんな島には、ピュアな心と好奇心でいっぱいの子供たちと、その子たちがそのまま大人になったとしか思えない、素敵な人たちが住んでいる。
彼らは、海を精いっぱい楽しみ、その結果として、海を心から愛し尊敬し、その愛と尊敬の気持ちが地球生命圏全体へと広がる実感を持ち、それゆえに、海の大切さを世に訴えかけている。
それも、環境保護を声高に言うのではなく「だって、海は素敵だから、一緒に楽しみましょう」とみんな口を揃える。
なんてわかりやすくて、素晴らしいナチュラリストたちなのだろう。真っ直ぐで、本気で、清々しくて……

blue planet 編集長 

油井 昌由樹